倍音を出す方法をトレーニングする声のサロン(新潟県新潟市)
倍音
  1. 共鳴発声法は倍音コントロール
  2. 基音の整数倍の上音
  3. ハーモニクスで倍音を取り出す
  4. 整数次倍音と非整数次倍音







倍音の出し方


●共鳴発声法は倍音コントロール


「倍音の出し方を教えてください」とのご依頼が言語戦略研究所に届くことがあります。

「『声のサロン』で指導している共鳴発声法が、倍音コントロールの方法です」と説明すると、「別ものだと思っていました」と驚かれる。

倍音の出方で「声の色」が決まります。声の色を良くするのが目的である共鳴発声法が「倍音のコントロール」を高度におこなうのは、当然といえば当然です。

また、「声のもと」(喉頭原音)を作るための声帯の使い方も重要です。いくら共鳴によって倍音をコントロールしようとしても、「声のもと」がよくなかったら、「傷んだ食材で料理を作ろうとしている」ようなもの。

ですから、倍音の出し方を知りたいなら、共鳴発声法をトレーニングしてください。



●基音の整数倍の上音


まず、本来の「倍音」を正確に理解しておきましょう。

「倍音」という言葉が本来の意味を離れ、いたずらに神秘性を孕んで独り歩きしているケースもあるからです。

倍音とは音響学の用語で、「基音の整数倍の周波数を持つ上音」を指します。

音にはさまざまな周波数成分が含まれています。この音を「純音の合成されたもの」と捉えた場合、純音の中で最も周波数の小さな成分を「基音」(きおん)と呼びます。

※純音は単一の周波数のみの音

440Hzのラを楽器や声で出したとき、実際にはほかの周波数成分がたくさん含まれますが、一番下の440Hzのみが「基音」です。

基音より上にある周波数成分はすべて「上音」(じょうおん)と呼ばれます。

440Hzが基音であるなら、440より数字が大きな成分はすべて上音です。

441Hzでも、442Hzでも、443Hzでも。

「えっ、2倍とか3倍じゃないの?」

そのとおり、「倍音」は2倍の880Hz、3倍の1320Hz……です。

定義を見直すと分かりますね。倍音は「基音の整数倍の周波数を持つ上音」ですから、880Hzは倍音ですが、881Hzも882Hzもただの上音。

1320Hzは倍音ですが、1321Hzも1322Hzもただの上音です。

基音より上にたくさんある(ありうる)上音の中に、ポツンポツンと倍音が点在している、と理解するといいでしょう。

「基音より下に倍音はないのですか」という質問がありますが、「それより下にあるか、ないか」というより、「一番下を基音と呼ぶ」と定義しているので、定義上は存在しません。

共鳴発声法によって倍音が強まると、「天使の声」といって合唱パートにないはずの声が聞こえてくることがありますが、仮に天使の声が強烈に強まって、逆に「下に別の音が聞こえる」ように感じられたとしても、「基音の下に倍音がある」にはなりません。

あくまでも「基音の上にある倍音が強烈に強い」と解釈します。

ざっくりまとめると、音にはたくさんの周波数成分が含まれ、その中の一番下を「基音」、それ以外のすべてを「上音」と呼びます。

上音の中で、基音の整数倍に相当する音を「倍音」と呼びます。

  • 音=基音+上音
  • 倍音⊂上音 (倍音は上音の一部)

ですね。



●ハーモニクスで倍音を取り出す


弦楽器を演奏する方なら、ハーモニクスという奏法をご存じでしょう。

あれが倍音です。

弦の真ん中、3分の1、4分の1の位置を軽く押さえて演奏すると、その弦の本来の高さに対する倍音を強く出すことができます。

バイオリンではこの奏法を「フラジオレット」と呼んでいました。

440Hzにチューニングした弦の真ん中に軽く指を触れたまま弾くと、880Hzの音が出ます。

軽く触れるハーモニクス奏法でも、しっかり押さえる通常の奏法でも、真ん中に限っては同じ高さの音になります。

ところが、不思議なのは弦の先から3分の1の位置まで指を下げて、つまり音高が下がる方向に移動して、軽く指を触れたまま弾くと、1320Hzの音が出るのです。

強く押さえた場合と、軽く指を触れた場合とで、同じ位置でもまったく違う高さになるのが、この奏法のおもしろいところです。

理論的には、4分の1、5分の1、6分の1と分割していけば、無限に高い周波数の倍音が取り出せるのですが、実際にはそう簡単ではありません。

4分の1ぐらいでも、私はよく失敗していました。

強く押さえすぎて通常の高さの音が出てしまったり、わずかに位置がずれてスカスカな音になったりしていましたが、うまくいけばほとんど力を使わずに2オクターブ上の音が鳴るのだから、不思議ですね。

聞けば、管楽器でもハーモニクス的な奏法があるそうです。リコーダーを強く吹きすぎて妙に高い音がピーッと鳴るのは、意図せぬハーモニクスなのだとか。

私たちの声は、弦ほど単純な構造ではないので、「真ん中を押さえてハーモニクス」みたいなわけにはいきません。

共鳴の技術を使って、倍音成分をコントロールしていきます。

その技術が共鳴発声法であるわけです。



●整数次倍音と非整数次倍音


では、倍音以外の上音(基音より周波数の大きな成分)は、何なのでしょうか。

ごくざっくりした言い方をしてしまえば、「ノイズ」です。

  • 空気漏れのような音
  • 嗄声(しゃがれ声、ハスキーボイス)
  • ささやき声
  • つぶれたようなだみ声
  • 声帯を傷めたような、ザラザラした声

こういった「ノイズ的成分」になるのが、倍音以外の上音です。

「非整数次倍音」などと、ちょっとカッコイイ名前で呼ばれることもありますが、なんのことはない、「倍音に相当しないノイズ的成分」と考えるといいでしょう。

このノイズには主に2種類あって、

  • 声帯の使い方によるノイズ
  • 共鳴腔の使い方によるノイズ

この2つは、似ているようでまったく違います。

声帯の使い方のせいで喉頭原音にノイズが混じる場合(嗄声など)、声帯という器官に負担がかかりトラブル(結節、ポリープなど)の原因にもなるため、矯正の対象となります。

一方、共鳴腔の使い方で共鳴の加わり具合が複雑になり、ノイズ的成分が乗っているのは、「高度な発声表現」として評価されます。

共鳴発声法は、後者の高度な発声表現までを含む技法です。



●倍音の出し方はこちら


倍音の出し方を習いたい方は、「声のサロン」で共鳴発声法の指導を受けてください。

詳しい説明はこちらのページ(声のサロン)にあります。





所長の齋藤匡章(言語戦略研究所、新潟県新潟市、東京都江東区)です。発声法やボイストレーニング、話し方、会話に関するご相談なら、何でもどうぞ。


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